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13th floorの



紺一色の大胆な筆使いで工芸品の趣のあるフィンランドABARIAのValenciaシリーズですが、20年にも渡り愛され続けたARABIA屈指のロングセラーでした。
製造期間が長かったこともあり、このシリーズならではの特徴がみられ、見どころがたくさんあります。
今回はカップ&ソーサーを観察してみました。



VALENCIA
Ulla Procope
1960


Valenciaのカップ&ソーサーは3種類のサイズをみることができます。
デミタス、コーヒー、ティーとよくある見慣れたラインナップです。
通常、テーブルウェアのシリーズではコーヒーとティーの2種類の設定が大半だと思います。
同じUlla ProcopegaがデザインしたRuskaのように何種類ものカップ&ソーサーが作られたシリーズもあるなかで、Valenciaの3種類のカップは珍しいものではありません。
気にすることもなく手にしていたValenciaのカップ達でしたが、ある時ふと目にした1960年代当時のカタログにはコーヒーカップとティーカップの2種類のみが並んでいました。
(?)
そういえば、同じ形のPAJUなどのシリーズにはデミタスとティーカップの大きさの2種類しか見かけることがありません。
Valenciaのコーヒーカップには何かがある!
もちろん詳しく観察せずにはいられません。






カップの比較

早速、カップを見比べてみます。
デミタスカップからティーカップへ高さと直径は順に大きくなっています。データー的には特に違和感はないのですが、 少し引いて見てみると、デミタスとティーはほぼ同じバランスでスケールアップしていますが、真ん中のコーヒーカップは背が高くスリムな印象を受けます。
更にじっと眺めてみると、やはりコーヒーカップだけがカップ自体の厚みが異なり、素材と紺色の釉薬の色も若干違うことに気がつきます。
どうやらコーヒーカップに面白い秘密が隠されている予感がします。
つぎにコンビのソーサーを観察してみましょう。

(画像をクリックしていただくと大きな画像で詳しくご覧いただけます)






ソーサーについて

カップと同じように3種類のソーサーを並べて観てみます。
ソーサーもサイズによってだんだんと直径が大きくなっていきます。 高さも順に高くなり、サイズ毎に丁寧にデザインされています。
形のバランスは3タイプとも違和感は感じませんが、じっくり見ればみるほどコーヒーカップのソーサーどこか違っているように感じてきます。
大胆に手書きされた絵付けのデザインは同じですが、ソーサーもやはり器自体の色と質感が異なり、絵付けの色も少し淡く見えます。
裏面の刻印はカップ共に手書きで1つずつ丁寧に入れられています。
(画像をクリックしていただくと大きな画像で詳しくご覧いただけます)







決定的な違い

そこで、もう一度カップをじっくり観察してみますと、決定的な形の違いを発見いたしました。
下の写真をご覧下さい。
コーヒーカップとデミタス、ティーのカップの持ち手をそれぞれ並べてみたものですが、デミタスカップとティーカップの持ち手はほぼ同じ大きさで薄い作りになっていますが、比べてコーヒーカップの持ち手は大きく厚い作りがされ、明らかな違いがあるのが見て取れます。
(画像をクリックしていただくと大きな画像で詳しくご覧いただけます)

デミタスカップとコーヒーカップ

コーヒーカップとティーカップ





コーヒーカップとデミタス・ティーカップとの間にここまではっきりとした違いがあるのには、何か理由があるはずです。
そこで、アイテムの観察から離れValenciaシリーズについて調べてみると、そこにはロングセラーならではの歴史がありました。
1960年にUlla ProcopeによってデザインされたValenciaは、紺色の釉薬を使って一つひとつ手書きされた高級なシリーズとして売り出され、その工芸品のような温かさが人気を呼び、その後20年以上も続くロングセラーとなりました。
プレートから燭台まで豊富なバリエーションを揃えスタートしたValenciaですが、時代が変わるにつれ使う人々の生活様式も変化してきます。
そこで、もともとなかったアイテムが追加されたり、サイズの変更がされていくことになったのです。

問題のカップ&ソーサーですが、スタートの時点ではコーヒーカップとティーカップの2つのラインナップでスタートしました。
当時の資料にあるサイズによると、現在のデミタスカップとティーカップがそれにあたります。なるほど、この2つは素材も持ち手の形も同じなわけです。
そして、70年代に入ってコーヒーカップのサイズが変更されます。それが今、私たちがコーヒーカップとして手にしている真ん中のサイズなのです。
このように使う側に立って改良を加えながら進化していったことが、ロングセラーとして愛された所以なのでしょう。
そして、メーカーでの製造が終了しビンテージとなった今。 私たちは他に類をみないほど充実したラインナップを誇るテーブルウェアシリーズValenciaを見ることができるのです。
今まで感じていなかった新しいValenciaとARABIAの魅力に気がつことができた今回の定点観察でした。

そういえばValenciaのプレートも数種類のサイズがありますね。しかもサイズ設定がなんだか不自然・・・。
ここにも何か秘密が隠されているかもしれません。 今後の観察が楽しみです。

 







Ulla Procope
今回ご紹介したアイテムの詳細はこちらでご紹介しております。






過去の特集はこちらからご覧ください。



 
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